ユキはいいよね。
バンさんからだって、オレからだって愛されちゃってさ。
そんで、オレとバンさんが仲良くしようとすると、すっごい怒るじゃん。自分も混ぜろっつってさあ。
でもさ、ユキがそこに混ざっちゃったらさ、バンさんがユキとイチャイチャしてるとこ、見なきゃいけないわけじゃん、オレが。オレとバンさんが、仲良しになるための会でさ? それ、めっちゃアンフェア。
っていうか、バンさんとユキ、たまに二人で飲み行ってんじゃん。譲ってよ! そこは。
バンさんと二人っきりだったら、絶対もっと色んな話出来るのに。共通の話題、探せばいっぱいあると思うよ。それに、二人だからこそ、ユキのこういうところ可愛いですよねって言い合えたりすること、あるんだよ。ユキのこと、結果褒めてるし、愛してるんだから、いいじゃん。全部を全部ユキに聞かせる必要ないでしょ。たまに、めっちゃ照れるし! 照れて、もういいよって、止めに入ることすらあるのにさ。
それにユキってば、オレが分かんない思い出話とか、音楽の専門的な話、わざとするでしょ。マジでよくないよ。
オレだって、バンさんといつか一緒に釣り行きたいですとか話したい! 行きつけの居酒屋とか知りたいし、アイナナの話だって聞きたいよ。
あと。バンさんとのラビチャ、一番怒るよね。
それってさ、なんなの?
なんか、バンさんのこと好きすぎじゃない?
独占しようたって、そうはいきませんぞ!?
モモはなんにも分かってない。
確かに、万とモモが二人きりで親交を深めようとしたら、僕は邪魔するよ。
だって、寂しいだろ。僕が、可哀想だろ。
それに、寂しくて可哀想な僕が、素直になるのは、可愛いだろ? それ、モモが言ったんじゃないか。そんなダーリンもキュートって。嘘だったってこと?
万とモモなんて、気が合うに決まってるし。放置してたら、大変なことになる。僕抜きで遊びに行く頻度が上がって、僕の知らないことで盛り上がるに違いないよ。ちなみに、モモが知らない話をしたのは、わざとじゃない。酔っ払ってた。それは、ごめん。
とはいえ、モモの万を見る目、正直、どうかと思うよ。自分では分かってないかもしれないけど、僕を見ている時と、全く違うし。普通に話してるだけなのに、目、キラキラさせちゃってさ。
それに、万とは別に、イチャイチャしてない。しようとするのは、モモだ。
モモが、猫撫で声で、嬉しいですっ、とか、大好きですっ、とか語尾跳ね上げて言うの、黙って聞いてる僕、おかしくない? そんなの僕じゃない。ラビチャだって、二人きりのトークだと逆にあんまり絵文字とか使わないでしょ。それも、ダメ。モモの一番が僕じゃない感じがして、凄く嫌。
それにモモだって、僕と万が話してる時、超不満げだよ。で、「どうしたの」って聞いたら「なんでもない」ってそっぽ向くでしょう。
そんなのさ、僕の方が、よっぽど素直で、いい子じゃない?
はいはい。ちょっと待った。
俺との話を、俺抜きでしないでくれるかな。それやると、君たち拗れるから。まだ三人で飲んだの数えるほどしかないのに、その数回、全部このやり取りして、拗れてるからね? なんで学習しない? もう二人とも、大人だろ。
で、こんなことを「いい歳した大人」かつ「他事務所」が「一番大事」にしている「トップアイドル」に言うのは、大変気が引けるんだけど。
いい加減に、しろ。
あ、ちょっと、涙目にならないでよ、二人とも。そんな本気で怒ってるわけじゃないから。
俺だって、別に千と一緒に居ることが嫌なわけじゃないよ。ただ、俺のためだけに、わざわざ時間作って飲みに行こうとするところが、ちょっと困る。楽曲制作で多忙なの、知ってるから。普通に休んで欲しいしね。百くんもそう。俺との時間作るために、結構色んな誘い断ってるって聞いたよ。それで逃したチャンスがあるんじゃないかと思うと、俺、結構ヒヤヒヤものでさ。
だから、俺の為を思ってくれるなら、今度も三人で飲むのがいいんじゃない。
で、千が酔っ払って、俺にしか分からない話をし始めたら、百くんに全部解説する。逆に、百くんが俺に対して、あんまり緊張してるようだったら、それもちゃんと言って、千の機嫌を損ねないよう気をつけるよ。
それで、ひとまず、手打ちっていうのはどう?
「なんかバンさんって、そういうところズルい」
「分かるよモモ。万はね、ずっとこうだった」
「……岡崎事務所に慰謝料請求しようかな?」