■4月10日
カウンセラーから日記を書くように言われる。できるだけ客観的に書くといいと言われたので、そうしている。
でも、何を書いていいかわからない。
仕事には行ってる。

■4月13日
自分の叫び声で飛び起きる。

■5月5日
久しぶりにお母さんとお父さんと喋る。みんな疲れていて、会話は続かなかった。
いつも「今日のRe:vale」の話をしていた時間がもうない。
弟がいなくて一年経った。
せいせいするかと思ったけど、そうでもなかった。

■5月15日
ここ一週間は特に調子が悪くて会社も三日休んだ。
バンはどこに行っちゃったんだろう。死んじゃったのかもしれない。死んじゃってたらどうしよう。
私も死ぬしかないかもしれない。

■6月10日
最近日記を書くのをさぼっていた。合う薬が見つかったので、少し楽になっている。けど、なにもやる気が起きなかった。仕事は、行ったり行かなかったりしている。
いつかクビになるかもしれない。
今日、弟の顔をテレビで一瞬見てしまった。

■6月12日
バンが血まみれで倒れてる夢を見る。
夢じゃなくて現実だったことを思い出して泣いた。

■6月30日
弟が家に荷物を取りに一瞬帰ってきたらしい。それを聞いただけで色んなことがフラッシュバックして部屋から出られなかった。弟に会いたくない。もうあんなこと言いたくない。あんなこと言う私になりたくない。でも我慢できない。だから会わないことしかできない。

■7月10日
弟は私からRe:valeを盗った。家族まで盗られたらどうしようと不安になる。

■8月2日
なんでそんなこと言えるんだろ全部私のワガママで嫉妬で八つ当たりなのに百だって家族なのに盗るとか盗られるじゃないのに私だって百の家族なのに日記に名前すら書かないでもう全部忘れたいRe:valeのこともバンさんのこともユキのことも百のことも全部忘れたい死にたいけどどうせ死ねないし仕事には行かなきゃいけないし百はどんどん有名になるし無視できるわけないし百が出てるテレビ録画してほんの数秒を何回も見返してるお父さんとお母さんがいるのも知ってるし私には絶対に秘密にしようとするしなんでとか言えないし
全部私のせい
でも私は悪くないって思いたい

■8月15日
中途採用の人が同じ部署に入ってきた。Re:valeの会場で何度か会ったことがある子だった。顔は見ないようにしてたけど話しかけられて「弟くん元気ですか」って言われた。「最近売れてるみたいですね」って、許せないって気持ちが全部伝わってきた。分かるよ。でも私に言わないで。知らない。私だってまだ許せてない。「バンじゃなきゃRe:valeじゃないし、弟くん歌もダンスも全然じゃないですか? お姉さんとして何かアドバイスとかしてあげてないんですか」
私の弟を悪く言わないで、って言えなかった

■10月2日
転職した。
同じ業種だけど、年齢層が高めでアイドルとか知らない人ばっかりのところを選んで受けた。

■11月20日
定食屋でかかっていた番組に、ユキと百が出てた。二人して楽しそうにしてて、ご飯が来る前にお金を置いて店を出た。
一生こんなことばっかりしてられないのに全然慣れない。

■12月24日
あの日のことを思い出す。
少しでも血を見ると卒倒していたあの時期に比べればずっとマシになったけど、まだ涙が出る。
これはずっと抱えていくものなのかな。

■2月5日
一年の通院が終わった。
あとは様子を見てたまに薬をもらいに行くぐらいでいいと言われた。
不思議なことに、私の中でRe:valeが本当に終わってしまった気がした。

■4月10日
日記はもう書かなくてもいいと言われたけど、たまに書くぐらいはしようと思う。
一年前の今日始めたみたいで、最初の書き慣れてなさに驚く。
あの時はこんなことを思っていたのか、と客観視出来るようになったら快方に向かっている証拠だと言われた。
それがこんなに悲しいことだと知らなかった。
多分これは治ったんじゃなくて、考えないようにするのがうまくなったって、それだけだと思う。

■5月27日
私も家を出ようかと考えている。

■5月30日
両親に相談したところ止められる。まだ治ったばっかりなんだから、と言われたけど、凄く怖がってるみたいだった。
両親にとっても私のことはかなりトラウマになっている。当然のことなのに、今の今まで気づけなくてショックを受けた。
百なんて、もう二度と私とは喋ってくれないだろうと思う。
とんでもないことをした。今更謝ったってどうにもならないし、謝ることで許されようとするのもおかしいから、何も言わない。
家を出るのはやめる。

■7月15日
職場の人から、恋人はいないの?と聞かれて、作ろうかなと思った。
そういう気持ちにここ数年一瞬もならなかった。バンが居たし、バンが居なかったから。

■8月1日
婚活アプリ的なものに登録した。今更合コンのノリについていけるか分からなかったのと、大人数で喋るのはまだちょっと疲れる。友達に紹介してもらったアプリだから、安心は安心。

■9月4日
広告でユキと百を見る。年末のブラック・オア・ホワイトに出場するらしい。
本当はバンとユキで出るはずだったものだと、ただそれだけ思った。

■10月20日
アプリで知り合った人と付き合って少し経った。
バンにもユキにも、当然百にも似てない人を選んでしまった。
でも、落ち着く。

■10月25日
両親に彼を紹介する。両親は凄くほっとしていて、やっと安心させることができたと思う。
私も、かなり落ち着いた。
人で空いた穴は人でしか埋まらないと思い知る。
ごめんなさいと言ったら何が?と返されて、ごめんなさいともう一回言った。

■11月8日
ブラホワの宣伝を沢山見かけるようになる。ユキと百は、新人ながら優勝候補だそうだ。
少しだけ興味が湧いたけど、それ以上は考えるのをやめた。
彼は優しく、家族間の事情も全て理解してくれている。
結婚も考えている。

■12月4日
百が、一年半ぶりに実家に顔を出した。ブラホワに出るから、よかったら観てほしいと両親に伝えているところを、階段の上から聞いていた。
両親は大喜びで、当たり前だろ、最高画質で録画するよ、今まで百が出ている番組は全部録画して保存してあるよ、と言っていた。百は泣いていたと思う。両親も。
私は泣く資格なんてないと思った。
百が家に帰れないのは私のせいなのだから、早く出ていかなくちゃ、と思った。

■12月19日
来年には籍を入れようかと考えている。そのタイミングで新居に引っ越すことも。
両親には止められるかと思ったけれど、彼なら、と快諾してくれた。

■1月10日
ユキが家に来た。
ユキが全部教えてくれた。何があったのか、どうして百が今Re:valeなのか。ユキがどれだけ説得されていたか。百がいなければ、今ユキは死んでいただろうことも。そして百は今でも必死でバンを探しているらしい。
5年の期限を設けていて、そんなの関係なく、ユキはもう百が大事だということ。
でも、同じようにバンのことも想っている。忘れない。
今までのRe:valeも、これからのRe:valeも、大事なもの。失くせないもの。百と、一生やっていくもの。
最後には頭を下げられて、私はもう、わかったよ、としか、言うことができなかった。
わかったよ。全部。

■1月17日
色々考える。
全然眠れなかった。

■1月20日
ユキから、百のラビチャIDを教えてもらう。
「総合優勝おめでとうぐらい言ってあげたら」と言われて、うるさいなと思う。
そのやり取りを彼に見られて、めちゃくちゃ嫉妬されて驚いた。
優しいだけじゃない一面が見れて嬉しかった。これはのろけ。

■1月21日
百のIDを見つめるだけで登録すら出来ない。
指が震えてうまく文字が打てなかった。
実の弟にこんなに緊張してるってどうなんだろう。
百は怒ったりしないだろうけど、私を思い出したら悲しむかもしれない。送ることが正しいかわからない。

■1月22日
二日間考え尽くして、もう何も分からなかったから
『瑠璃だよ。おめでとう』とだけ送った。
返信なんて来ないだろうと思ったけど、すぐに『百だよ。ありがとう!』と返ってきた。
手が震えて、息が上がって、涙が出た。嗚咽が漏れた。
自分の部屋でよかった。こんな顔、誰にも見せられない。
誰にも見せたくない。
これは私と百だけのものだと思えた。

ちゃんと伝えるにはまだ時間が必要だけど、やっと、いつか、言えると思った。

ごめん。ごめんね。
大好き。
ずっと大好き。

世界で一番、自慢の弟だよ。百。


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