「おっかしいなあ〜」
 と、結構大きめの独り言が漏れた。
 あっ、と慌てて自分の手で口を塞ぎ、きょろきょろと辺りを見回す。そもそもここはオレの部屋なので、誰かに聞かれる心配はないんだけど。扉の向こう側に、人の気配も感じない。よかった、と手を外し、軽めにため息をついた。

 ベッドレストの前に大きなクッションを置き、そこに背中を預けて片手にはスマホ。ラビチャの画面には、ついさっきまで続いていた一織とのやり取りが表示されている。
 一織の硬い文章は相変わらずだ。しかし、よくよく読むと過去の会話も全部オレのことを気遣ってくれている。から、優しいよな、と思う。
 そう。一織は優しいのだ。
 お小言もたくさん言うし、厳しいところもいっぱいあるけど、物凄く優しい。一番欲しいと思った時に、クリティカルな言葉をくれる。オレが凹んでる時に、ファンサしてくれもする。
 不器用で、一所懸命で、結構泣き虫で、可愛いやつ。
 それで、多分オレのことが好き。
 あ、いま頭の中の一織が「七瀬さん!!!」って言った気がする。うるさいなーもう。
 いやだってさ、一織は気づいてないんだろうけど、オレのことを見てる時の目、びっくりするぐらい優しい時あるよ。あと何回か、オレの横で、かなり小さい声で「カワイイヒトダナ」って言ってたし。……まあこれは、三月にもマネージャーにも言ってるみたいだから〝オレを好き〟だと思う理由には、ちょっと甘いんだけど。
 あ、あとオレが車の後部座席で船を漕いでる時、わざわざ自分の肩にオレの頭を引き寄せて一緒に寝たこともあった。あんまり眠い時には膝を貸してくれて、その時は優しく頭を撫でられたりした。あれってオレがぐっすりだと思いこんでるからやってることなのかな。
 ごめん、結構起きてる。
 そんでもって、こういうことを他のメンバーにしてるところは見たことない! ダウト!
「なのになあ〜〜……。おっかしいな〜……?」
 オレのことを好きなはずの一織は、どれだけ「オレのこと好き?」と問いかけても「は?」とか「何言ってるんですかあなたは」とか、気のない返事ばっかりで相手にもしてくれない。
「オレは一織のこと好きだよ」
「はいはい、どうも有難うございます」
「本当に好きだよ?」
「だから?」
「か、可愛くない……」
「可愛がろうとしてくれなくて結構」
 これ、普通にびっくりした。
『あなたに可愛いなんて言われたくありませんっ』じゃないんだよ。『可愛がろうとしてくれなくて結構』って。信じられないほど可愛くなくて、流石のオレもこの時ばかりは絶句した。し、三月が「言い方!」とちょっと怒ってくれた。ありがとう三月。大好き!

 ということで、直接訊くからダメなのかな、とラビチャをしたのが今さっき。
『一織ってオレのこと好きだよね?』
『だから、なんなんですか最近。ドラマかなにかの影響ですか?』
『好きか嫌いで言ったら?』
『答える理由がありません』
『じゃあ嫌い?』
『なんでそうなるんですか』
『あ、じゃあ好きなんだ!?』
『だからなんでそうなる!?』
 もうずっとこんな調子。辞書の〝堂々巡り〟のページに、このやり取り載せて欲しいよ。
 泣き顔きなこのスタンプを送ったら、既読マークすらつかなかった。完全に怒らせたみたいだ。
 きっと一織は今ごろ自分の部屋で、画面に向かってお小言を呟いてる。だったらオレの部屋まで来てくれればいいのに、と思う。直接顔を見せて、文句を言ってほしい。
 なんてね。
 朝晩調子が整わないことが多いオレを気遣って、そうしないでいてくれてることだって、勿論分かってる。その度オレは感謝して、ちょっとだけ苦く笑って、一人で寂しがっているのだ。
 一織はいつも正しい。正しすぎて、寂しい。オレの前ではいつだって背筋をピンと伸ばして、気を張っているように見える。「オレが頼りないのがいけないのか」と訊けば、「そんなわけはないと」真っ直ぐ返されて、結局励まされている。それもまた繰り返しだ。俺の方が年上なのに、とか、考え尽くして、もう口にするのはやめてしまった。
 オレもおまえにとって、せめてもうちょっとぐらい――いいものでありたいと思ってるのにな。
 それに、これだけ〝好き〟って態度をとられて、「別に」って言葉で突き放されるのって、結構堪えるものだ。

 あーあ、と前屈するみたいに体を折ってため息を吐いた。
 誰かにアドバイスを貰おうにも、こういう話が出来る相手って実は全然いないのだ。……やっぱりマネージャー? いやでもな、なんかそれはそれでちょっと違うっていうか。
「……あっ!」
 ガバッと起き上がる。そっか。メンバーやマネージャーよりかは距離があって、でも相談に乗ってくれる人。困ったことがあればなんでも相談してね、と会う度に言ってくれて、実際何度も助けてもらった。美味しいごはん屋さんや、アイドルでも遊べる穴場のレジャースポット。一聞けば百返してくれる――そう、Re:valeの百さんは、何でも知っている魔法使いみたいな人なのだ。
 ということは、今オレが解決したい問題も、一発で答えをくれるかもしれない。部屋の時計を見ると、短針は11を指している。ギリギリ、許される時間かな?
 期待に胸を膨らませて『こんばんは!』と送る。ラビチャはすぐに返ってきた。
 ピロリン。
『こんばんは。どうしたの、こんな時間に』
『お疲れ様です! ご相談したいことがあって、今ってお時間大丈夫ですか?』
『勿論いいよ。相談なんて嬉しいな。ぜひ聞かせて』
 いつもみたいに可愛い顔文字乱舞ではないことにちょっと驚いて、でもそんな百さんもカッコいいな、とドキドキした。なんて頼りになるんだろう。解決の糸口が見えたことに、まずはほっと胸を撫で下ろした。
『有難うございます! あの、実は、オレのことを好きな人がいて』
『へえ。陸くんが好きな子、じゃなくて? 陸くんのことを、好きな子?』
『はい。でも、そいつそれを全然認めてくれないんです。どうすれば認めてもらえると思いますか?』
 流石に名前を出すのはよくないよな、濁して伝えたら、よくわからない感じになってしまった。ちょっとだけ間があって、返事が来る。ピロリン。
『相手は一般人?』
『アイドルです!』
『へえ、いいね。茨の道だ』
 え、茨の道!? それっていいの!?
 ……でも百さんが言うなら、いいのか。業界の大先輩、きっと百戦錬磨だったんだろうし。
 男とか、同じグループとか、そういうことはオレ自身もあまり気にしていない。そもそも、相手があの〝和泉一織〟だっていうことが、何よりも難関なわけで。
『頑張ります!』
『いや、陸くんは頑張らない方がいいよ』
「え!」
 と声が出た。予想外の返信に、ちょっと固まる。頑張らないって、そしたら一生答えは聞けずじまいになりそうだけど、どうすればいいんだろうか。オレの困惑を先読みしたかのように、メッセージはすぐに送られてきた。
『意地になっている子に、何度同じことをしても無駄ってこと。そういう時は、逆に引いてみるといい。いっそ、相手から同じ話題を振られても『もういい』って返すのもおすすめだよ』
『……それ、嫌われませんか? オレ……』
『そこが狙いだから、うまくやらないと嫌われるかもね』
「えー!! それは困る!!」
 これ以上怒らせたくないし、嫌われるなんてもってのほかだ。オレ、うまく出来る自信全然ないよ。多分、オレが想像している何倍も一織を怒らせてしまう気がする。それは同じグループのメンバー同士としても、普通に良くないし。
 それに一織には、オレを好きだって気づいて欲しいけど、それ以上にオレのことを好きなままで居てほしい。
 ……あれ、でもこれって、我儘なのかな。どっちも欲しい、って言ってるようなもの?
 考えがまとまらないから、百さんにもどう返していいか分からない。オレが目をぐるぐるさせていると、ピロリン。百さんから新着メッセージ。
『まあ、陸くんとその相手の子なら、大丈夫じゃない?』
 ええ? 本当かな。オレは全然、ちっとも自信がない。
『どうしてそう思うんですか?』
『なんとなく。感覚?』
『な、なるほど……』
 いや、でも。自分が凄く我儘なことを考えてるって分かっただけでも、かなりの進歩だ。作戦は……百さんに教えてもらった方法以外のことを、ちょっと考えてみて。それでもダメそうだったら、もう一回別の方法はないかを相談してみよう。
 ああ、でも人に相談出来て、スッキリした。なるほど、そっか。
 オレって一織に好きでいて欲しいんだ。オレのことを。オレが一織のこと、ずっと好きなように。
『もうちょっと自分でも考えてみます! 凄く助かりました! 有難うございました!』
『あ、本当? またいつでも連絡してね』
『有難うございます! また今度、美味しいご飯のお店も教えてください!』
『美味しいご飯……? ああ、そうね。情報、横流ししてあげるよ』
『本当ですか!? 嬉しいです! じゃあ、おやすみなさい!』
『はい、おやすみ。茨の道、楽しんで』

 メッセージ画面を閉じて、ふう、と一息。
 さて、自分で考えるって言ったけど、じゃあどうする? って話だ。ぼふ、と体をクッションに預けて天井を見上げ、ううん、と唸る。むいむいと唇を引き結んだり緩めたり、無意識に顔の体操をしていたところで、コンコン、と控えめに二回、扉がノックされた。
「あ、はーい」
「…………和泉一織です」
「え!?」
 びっくりして飛び起きた。和泉一織って、あの和泉一織? っていうか、「和泉一織です」って!
 ベッドから下りて、扉を開けようとすると「待ってください」と止められる。
「え? どうしたの?」
「あなたね、自分の体調のことちゃんと把握してくださいよ。私は部屋には入りません」
「あ! そ、そうだった……。ごめん……。……え、じゃあオレ、ここに立ってればいいの?」
「はい。そこで聞いていてください」
 ――……。
 数秒間、何もない時間が過ぎる。え、一織、居るよね? そこに?
「い、いおり? どうしたの? なんかあった?」
「…………さっき」
「うん」
「部屋の前を通りかかった時に、声が聞こえて。……困る、とかなんとか」
 うわっ。それオレのめちゃくちゃ大きい独り言だよ一織。廊下に聞こえちゃうほど大きい声で叫んでたのか。ヤバい、ちょっと恥ずかしい。
「そ、それはね……えーっと……」
「誰かと喋ってたんですか? ……こんな時間に電話を……?」
「ち、違うよ! でも、あのね、えーっと……」
 実は百さんに一織のこと相談してました、なんて言えない。でもうまく誤魔化せなくて、なんとも微妙な反応をしてしまったって、自分でも分かる。
 ほらやっぱり。こんなんじゃ百さんの助言通りになんて、出来るわけない。
 一織はどこか様子を窺うような、探り探りの声だ。多分色々と気を使ってくれていて、それにちゃんと応えられないのが申し訳なかった。
 ……うーん。内容さえ言わなければ、普通に說明しても、大丈夫……かな?
 だって一織が可哀想すぎるし。
「あのね、も、百さんとラビチャしてた! 百さんためになることいっぱい教えてくれて、だからそれにいちいち反応しちゃってたんだ。うるさかったよね、ごめ……」
「百さん? Re:valeの?」
 謝る前に、一織の声に掻き消された。ちょっとびっくりしているような、不機嫌に近い声色にびっくりする。つい今しがたの、弱々しい声はどこかに消えてしまった。
「そりゃそうでしょ!」
「百さんなら、さっきまで深夜番組に生出演してましたけど。テレビに出ながらラビチャは不可能では?」
「……ええっ!?」
 じゃ、じゃあ今まで会話してたのは、一体。
 え、どちらさまですか!? 本当に!
 オレが一人で物凄く衝撃を受けている時間を、一織はなんだか良からぬ方向に捉えてしまったらしい。
「何故嘘をついたんですか? ……もしかして、連日の七瀬さんの不可思議な行動に関係が?」
「ふ、不可思議っておまえな〜! いや待って、オレも今ちょっと混乱してて……」
「嘘をつくだなんてらしくないことするからでしょ」
「嘘じゃないんだってば! じゃ、ないん、だけど〜〜〜……」
 百さんと思ってたのに全然違う人とラビチャしてました。それに気づかずアドバイスもらって、気づかずに会話全部終わっちゃいました。
 ……なんて、真実を伝えたとしても一織に怒られる。絶対怒られる。え、どうしよう!? 怒られる上に嫌われる!?
 オーバーヒートを起こしそうになった頭は「今日これ以上は無理だ!」と結論付けた。明日、一体誰と話していたのかちゃんと確認して、謝って、一織とのことはそれから。
 ……そ、それからだ。うん、そうしよう。
「ごめん! 一織! ちょっとオレ、もう今日は寝るね!」
「はあ!? 待ってください。あなた、私の質問に全然答えてませんから!」
「うん、ごめん! 絶対明日話す!」
「明日って……七瀬さんは明日から二日間、四葉さんと六弥さんと泊まりのロケでしょう!?」
「あっ! そうだった! じゃあ尚更もう寝なきゃ……」
「〜〜〜〜〜〜あの!!」
 ガチャッ、と開かずの扉が開く。目の前には、顔を赤くした一織の姿が。
「私のことが好きだと言う割に、あなたやけに冷たくないですか!?」
 えっ。
 一織は約束通り、一歩も部屋には入らない。だから廊下で、目一杯大きな声を出す羽目になっている。環は寝ているかもしれないけど、あとのみんなは多分まだ起きてるよ。いいの?
 でもオレはそう返すより先に、口からついて出た言葉をそのまま伝えてしまった。
 なんか俺たち、いつもこんな感じだよね。
「つ、冷たくなんかしてないじゃん! 明日……は、無理だったけど、帰ってきたらちゃんと説明するし!」
「〝今〟出来ない理由ってなんなんですか? そこが怪しいって言ってるんですよ!」
「うぅ〜〜〜……だって一織、絶対怒るし!」
 は、と一織が顔を強張らせる。
 オレはそこで、一瞬にして自分が失敗してしまったことを理解した。
 ああ、もう、これは言っちゃいけないやつだったじゃんか。
「……やっぱり」
 そう言った一織からは表情が消えてしまった。寮という、全員が素でいられる唯一の場所。ここで、その顔をさせてしまった事実に悲しくなる。
「何かの企画? それとも誰かの入れ知恵ですか? 全く理解出来ませんが、これ以上私を巻き込まないでください」
「……違うよ」
「いい加減しつこい。早く種明かしをして。あなたから、……好きだの、好きなんだろ、だの。毎回律儀に否定するのもほとほと疲れてるんです、こっちは」
「本当に違う! オレが、本気でそう思ってるから言ってるんだよ!」
「じゃあ電話は? 『あいつに本気になられたら困る』とか、そういう内容だったんじゃないんですか」
「……だ、か、らぁ〜〜〜〜……」
 全然埒が明かない。いつもの無限ループの堂々巡りに入ってる。一織だって、思ってもないようなことを、言ってるんじゃないのか。
 ここでまたオレが否定して、更に一織がそれを否定して、それでお互い納得せずに睨み合って。
 オレはおまえが好きで、おまえもオレが好き。たったそれだけの話が、こんなにもこじれる。
 ――それってでも、大体オレが悪い。いつだってオレが意地を張って、甘えて、我儘を言って。一織は正しく説き伏せて。今だって、オレがオレのミスを隠したくって、怒られたくなくて遠回しなことばっかり言って、だからダメになっちゃったんだ。
 だとしたら、このループを断ち切るには、オレが折れるしかない。
 嫌だけど。辛いけど。嘘だけど。
 でも、それすら全部オレの気持ちでしかないのだ。
「……分かった。ごめん。もういいよ」
「……は?」
「だから、もういい。ごめんね。……もう、言わない。『一織が好き』とも、『オレのこと好きなんでしょ』とも、絶対に言わないようにする」
 言っていて、びっくりするぐらい悲しくなってしまった。喉が窮屈に締まるから、声がかすかに震える。
 思わず俯いて、自分と一織の足元に視線を落とした。
「一織が怒ってることに対して、說明も……ちゃんと、する。だから」
 息を吸って、吐く。それと同時に、自分の目から、ぽた、と一滴落ちてしまった。
 構わずに続ける。
「嫌いにならないで」

 しばらく、怖いぐらいの沈黙が続いた。耳がキン、と痛くなるような。一織の息遣いひとつ聞こえないのは何故だろう。
 まずいなあ。涙の止め方が分からない。だから顔が、上げられない。
「……七瀬さん。そのまま聞いていてください」
 扉越しに喋っている時と、なんら変わらないセリフだった。オレが泣いていることに気づいて、わざわざそう言ってくれたんだろう。
 向き合ってるのに、オレたちの間には透明な壁が一枚、必ず挟まっている。
 うまく声が出ないから、代わりに頷いて答えた。
「私は、あなたをスーパースターにする、と約束しました。あなたも、そう在りたいと言いましたよね」
 こくん。頷く。
「スーパースターは、……誰のものでもあり、誰のものでもあってはいけない。一人ではなく万人に愛を捧げ、万人の中の一人にまで、くまなく微笑みかけなければいけない」
 それには頷けなくて、ゆっくりと顔を上げる。
「……だから、私は……」
 一織と、やっと目を合わせることが出来た。口元を手の甲で隠して、酷く辛そうな顔をしている。
 ああ、なんだ。やっぱり一織、オレのこと好きなんじゃん。
 でも、そっか。そっかあ。一織はそれを、自分で許せないんだ。オレをスーパースターにしなきゃいけないから。
 まだ喉は震えているけれど、涙は止まった。ちゃんと伝えなきゃいけない言葉があるから。
 だってオレは年上なのだ。頼ってもらえなかったとしても、やっぱり少しでも、おまえにとっていいものでありたいよ。
 好きなら好きって、想い続けて欲しいよ。
「茨の道でも楽しんで、って、言われた」
「……誰に?」
「分かんない。でも、きっと、素敵な人だと思う」
「ふ、なんですかそれ……」
 意味が分からない、と一織の口元が少しだけ綻んだ。それに、あからさまにほっとしてしまう。一織は優しい。それでもって、可愛い。
 不器用で、一所懸命で、結構泣き虫で、可愛い。それが一織だ。

 いばらのみち。と、一織はつたない発音で繰り返す。
 いばらのみち。オレも繰り返す。
「楽しんじゃいけないでしょう、そんなの」
「うん。だから一織は、そう思ってて。オレが楽しくなりすぎたら、ちゃんと止めてね」
「……楽しむ気ですか」
「うん! だってオレ、一織のこと好きだもん。一織は?」
「……………私、は」
 ぐっと腕を掴まれて、引き寄せられた。耳元で、オレにしか聞こえないように、オレだけに囁かれた言葉。

 ごめんね。
 こんなとびっきりは、君にだって聞かせられない。




 その後。
 オレは一織に、千さんは百さんに、しこたま怒られたのだった。ラビチャの相手が千さんって、なんで気づけなかったんだろう。
 それと、もうひとつ。
 分かってたけど、分かってたけどさ。
 一織のお説教は、本当に長い!


その全てが愛