「明日はオフ」は魔法の言葉。僕らをダメにする最強のおまじない。なんて言えば聞こえはいいが、どっちかというと麻薬っぽい。
僕の家でぐでぐでのべろべろになったモモが、コアラみたく僕の腕にしがみついて離れないのも、麻薬の効果だ。僕を木か何かと勘違いしているのか、全体重をかけてくるので、姿勢を保っているのもなかなか骨が折れる。こうなったモモは、一言でいうとめんどくさい。
「モモ、重いよ」
「明日オフなんだから、いいじゃんッ」
「僕は眠い。明日起きてから仕切り直そう。だから一旦離……」
「明日オフなのに!? そんな日にオレとのファンミを切り上げるなんて、ヒドイ!」
モモはそう言って、ワッと泣き真似をする。……腕にはしがみついたまま、額を僕の肩にゴリゴリこすりつけつつ。
「いた、いたたた」
「ねぇユギぃ〜〜〜オレのことすき〜〜〜〜っ!?」
「好き好き。ほら、立って。もう寝よう」
「そんな作業みたいに言わないでよ!」
「マジで言ったら怒るじゃない」
「今はマジで言っていいタイミング!」
抗議の為にあげた顔は、アルコールと、妙なテンションの起伏によって真っ赤に染まっていた。僕の肩に擦りつけすぎた額はもはや痛そうなほどで、流石に笑える。この酔っ払い、力加減も分からないらしい。
「じゃあ、ベッドの中で言ってあげる」
「べ、べ、ベッドッ? そしたら……マジになっちゃうじゃん!」
「マジだよ」
「え、えっ? ほ、ほんとに? ほんとにマジなの?」
はにゃ、みたいな顔で困り果てたように言ってくるので、死ぬほどめんどくさくて、恐ろしく可愛いなと思う。べろべろのくせ、こういう時にちょっと正気混じりになってしまうのは、損だよね。
酔った勢いでキスも出来ないで、ただ腕にしがみつくだけ。そんなんじゃ、僕は全然なびかないよ、って、そういう態度でいるのも、実は結構楽しかったりする。
なんて言えば聞こえはいいが。
ごめんね。僕も臆病だから。
出来れば、麻薬が切れる前に言わせて。
「好きだよ」