1000-029

 今日は駄目そうだな。と、横向きの体勢から仰向けに寝返りを打って、古ぼけた天井の木目をじっと見つめた。
 眠れる日と、眠れない日。まちまちだ。不眠の気が強いのは昔からのことで、これはきっと、死ぬまで治らない。
 それに、眠れたとしても、今度は夢見が悪かったりする。悪夢を見るぐらいなら、こうして起きている方がマシだ。
 布団を並べて眠るモモくんの吐息に、そっと耳を澄ませる。すう、すう、と一定に紡がれる呼吸音。聴いていたら、眠くなるかな。――と、そうやって聴き続けて数分後。どこか、違和感を覚えた。
 いくらなんでも、呼吸が一定すぎるのだ。それに、寝相の悪いモモくんが、この間に寝返りひとつ打っていない。
「……もしかして、起きてる?」
 もしこれで、寝ていたら可哀想だ。出来る限りボリュームを絞った声で問いかけると、すうすうと鳴っていた音が、ピタリと止まった。
「……はい」
 とても、バツの悪そうな、なんとも申し訳なさそうな声だ。誰も怒っていないのに、勝手に叱られている。
「寝たフリ、うまいね」
「でも、バレちゃったので……。次は見破られ……うん? 聞き……聞き破られ? ないようにします」
「知らない日本語だ」
 なぜか二人して、内緒話のように囁きあう。どちらも仰向けで、視線すら合わせなかった。
 モモくんでも、眠れないことがあるんだね。とは、聞けなかった。それはだって、十中八九僕のせいだ。元凶にそんなことを言われたら、たまらないだろう。
「……眠れないと、暇ですね」
 そうね。と。返す頃には、モモくんはもう眠っていた。

 次の日の夜のことだ。
 バイトから帰ってきたモモくんが、突然天井から壁、床と所狭しと貼りまくった蓄光の星座ステッカー。
 それは当然、眠りを妨害するレベルで煌々と光輝き、僕を爆笑の渦へと陥れた。さながらパーティー会場の輝きを見て、「星を、星を数えてたら、眠くなるんじゃないかって……」と、半泣き状態のモモくんが、布団の上に力なく横たわっている。いやいや、気づくでしょ、普通。
 凄いなあ。君がいれば、眠れない夜も、こんなに楽しくなるのか。腹を抱えて笑うなんて、どれぐらいぶりだろう。
 その事実が、夢よりずっと、夢みたく思えた。