1000-015

  夏だ。灼熱の夏。最悪の夏。
 毎年律儀に暑くなるの、完全に喧嘩を売られているとしか思えない。それなのに、モモは昨日から、オフを丸一日使ってサーフィンに興じている。と、知ったのすらラビスタの更新だ。
 三月くんと龍之介くんと三人で写っている写真にハートを一つ飛ばして、スマホをテーブルに置く。ふう、と一息。
 こんな時期に外で、あまつさえ海で、波に乗るなんて考えられないな。モモのことは大好きだけれど、モモのこういうアグレッシブさに多方面で支えられているけれど、本当に、理解出来ない。多分一生分かり合えないし、それで構わない。だってモモも、こんなピーカンで外に出ないなんて考えられないって、いつもそんな顔をしてるし。分かり合えないことが面白いってのもある。僕たちはそういうところ、全然譲り合わないしね。
 そんな僕は当然、空調を完璧に整えた自室で、映画を観たり料理をしたり、本を読んだり趣味の方の音楽を作ったりとオフを満喫している。
 リビングに設置しているB&Wのスピーカーは「貝殻みたいで可愛い」とモモに評判だったが、値段を知った途端「ぜんっぜん可愛くない……マジで?」と本気で引いた目をしていたのを思い出した。「モモの交際費一年分ぐらいだし、変わらないよ」と言ったら、それが小さな火種となってそのまま喧嘩になった。はずだ。
 お互い、大事にしたいものが違いすぎるから、こうした些細な諍いはいくらでも起きる。その度おかりんに仲裁に入ってもらうわけだけど――最近のおかりんは、もはや静観に近い状態で「どーどー」ぐらいしか言わなくなってしまった。それに「オレたちは鳥じゃない…!」と反発し始めたモモが的外れすぎて、僕のツボを完璧に押したせいで喧嘩は終わったんだっけな。
 ピコン、とスマホにメッセージの着信音。「モモ」の文字が画面に浮かんで、テーブルに置いたまま指先でタップする。
『新鮮なお魚と野菜を手に入れました』と一言。
 なるほど、モモのことを考えていたのがバレたらしい。
確かにね、僕はそもそも、いつもハートひとつ飛ばさない。
 ヤキモチを妬いてますよ、と、ちゃんと伝わったなら幸いだ。スピーカーモードにして、電話をかける。一秒もしないうちに繋がって、開口一番モモは言った。
『今ならモモちゃんがセットでついてきます!』
 そっちがメインでしょ。笑って「よろこんで」と応えた。