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 おひさまだってさ。
 ちょっと笑っちゃうぐらい可愛い表現に、オレは年甲斐もなく大喜びだ。収録の時、とっさに「嬉しい〜!」なんて言ってみせたけど、オレの喜び方といったら、本当はそんなもんじゃなかった。叫び出したくって、「おひさまだって!」って言ってまわりたくなるような、そんな感じ。大人だし、収録中だし、やらなかったけどさ。
 あ、まずい。嬉しすぎて、思い出しただけでどろどろに溶けそう。
「モモ、汗すごいよ。平気?」
「えっ!? あれ、ほんとだビショビショ!?」
「そんなに暑かったですか? すみません、クーラーの温度下げますね」
 というメイクさんの気遣いが申し訳ない。あの、顔が溶けるって、そういうことじゃないんだけど。汗っかきのオレ、全然可愛くなくない? ユキの方が百倍可愛くない? Re:valeの可愛い担当(自称)なのに、参ったな。
「ごめんごめん! 大丈夫だよ。ちょっとテンション上がること考えちゃった!」
「へえ、何を?」
 隣で優雅に髪を梳かされているユキが、鏡越しに興味ありげな視線を送ってくる。大分暇で、珍しく眠くもない、そういうタイミングだったみたい。オレが正答すべきか一瞬考えた隙を狙って、ユキが楽しげに口を開いた。
「あ、モモ。ファンサして」
「わー! やられた! チュッ!」
「ふふ、僕の勝ち」
 温度調節から帰ってきたメイクさんが「うわまたやってる」と呆れ顔を作る。今、オレたちの間では空前の投げキスブームが来ていて、どっちがより相手のファンサを貰えるか勝負している。ユキ、間の取り方が絶妙だから、オレは結構負けが込んでる。でもいいんだ。何せオレはおひさまなので。キスぐらい、いくらでもしてあげましょう、という寛大な気持ち。
「ところで、テンション上がることってなんだったの」
「それね〜。……あ! ファンサしてくれたら答える!」
「チュッ」
「あはははっ! ダーリンったら、速すぎ!」
 八重歯がくっきり見えるぐらい大口あけて笑ってしまって、なのにユキは幸せそうに目を細める。愛おしそうに、そっと口を開く。それでもって、ささやかな声で言った。
「モモがまぶしくて、ついね」