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 風邪を引いた。一気に熱が出た。
 即座に仕事の予定をリスケしてもらい、薬を飲み横になる。じゃないと以降一週間は体調不良を引きずるし、何より相方のモモが大変な騒ぎ方をするから。
 その騒ぎようと言ったら天変地異の一言に尽きる。騒音被害で訴えたら裁判になる前に勝てるような、そういうやつ。最終的には、心配しすぎたモモが僕よりも具合を悪くし始めるので、二人で限界まで熱が上がり倒れる、なんてことも同棲時代はしょっちゅうだった。僕も僕で体力がなさすぎて、モモを看病なんて出来るはずもなく。息も絶え絶えでおかりんに連絡して、看病をお願いすることもあった。勿論、完治したらお説教を食らうまでがセット。
 故に、一人暮らしを始めてからは、もし具合が悪くなったとしてもモモには伝えないし、おかりんにも口止めをお願いしている。モモの口癖は「ユキに会いたい」「ユキは今どうしてるかな」なので――まあ僕も同じだけれど――うっかり答えないように気をつけてね。と。
 ……お願いしていた筈なのに、今回は珍しくやらかしたらしい。ラビチャで簡潔に謝罪を受けて、最後に一言。
『もうそちらに向かっています。止められませんでした』
 何か恐ろしいものに対して使う言葉じゃない? それ。
 それからすぐ、玄関扉が開く音が聞こえた。本当に早い。
 ドタバタと廊下を駆ける音、そして寝室の扉が開くまで、およそ五秒。外の匂いを身に纏ったモモがベッドサイドに駆け寄り、しゃがみこんでからの第一声。
「ユキ、死なないで」
 モモの方が死にそうな声だ。
 あー、これこれ、とちょっと懐かしく思ってしまう。出来ればこの郷愁に浸りつつ眠りたかったけれど、それをモモが許してくれない――と、思いきや。
「……何、してるの」
「着替えてる」
「……そうね。パジャマ?」
「添い寝しにきた。寂しいと余計死にそうになるから……」
 いやそれはモモの話じゃない? と言うより先に、ベッドに忍び込まれた。ぎゅっと後ろから抱きつかれて驚く。本気で、今から一緒に眠るつもりらしい。風邪薬は飲んできたから安心してね、とモモは言う。
 ……大人になったな、と感心して、もしかして他のヤツにもしてないだろうな、と心配した。
 とはいえ。背中のぬくもりに安心したのも事実で、よいしょ、と寝返りを打ち、正面から抱きしめて眠った。