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 あーこれ風邪だなって気づいた時にはもう遅い。
 で、気づいてしまったからには、体調はぐんと悪くなる。耳の奥がじんじんと痛み、目に水分が溜まっていく。視界が滲み始め、喉が少しひくついた。
 今日のラストは深夜ラジオの収録だ。お世話になっている先輩が風邪を引いて、ピンチヒッターとしてオレが一人喋りをすることに。それなのにオレも風邪ひいててどうすんだ。喉に溜まる熱が気になって、ついでに咳払いをしてみたら戻しそうになった。慌てて唾を飲み込み、押し込む。
 うわ。これ、結構。きてるかも。
 今日に限っておかりんもサブマネくんも別現場で、オレは一人だ。明日は幸い夕方からの収録なので、帰って着替えて薬飲んで毛布かぶって汗だくになって寝ることに決めた。そういう原始的な方法が、結局一番効くし。
 なのに。今日は多分ツイてない。タクシー乗り場には一台も停まっていないどころか、人っ子一人いなかった。いい加減体力も限界で、へなへなとしゃがみ込む。
 参った。めちゃくちゃ具合悪くなってきた。ここで吐いてもいい? ダメ? 泥酔のRe:vale百、路上で嘔吐って見出しついちゃう?
 コンクリートの一点を見つめるぐらいしか出来ないオレの、ぐにゃぐにゃした視界が、少しだけ陰った。誰かがオレの前に立ったみたい。知り合いだといいな。バイク乗りなら尚良い。勿論、車持ちだったら最高。
「――モモ、大丈夫?立てる?」
 びっくりして、閉じかけていた目を見開いた。
 ああ、めちゃくちゃ上等な靴を履いていらっしゃる。
 流石、オレの愛しの相方様。ダーリン、靴もイケメン。
「なんでいるの〜……」
「隣駅でロケだったから。車でラジオ聴いてたら、喉やってるなって思って様子見に来たよ。風邪?」
「......うん、たぶん」
「梅と鮭、どっちがいいか考えておくこと」
 ユキが膝を折って背中を向けてくれる。オレがしんどい時、絶対おんぶしてくれるユキが好き。
 よいしょ、と立ち上がったユキは「重いな」と嬉しそうに呟いた。
 ――は!? 許さない。一気に嫌いになった。オレ的に、その言葉超地雷だよ!
「もっと重くなってやる。ユキのご飯で!」
 腹を立てたオレはすっかり元気だ。お粥じゃなくてパスタを食べたいと言って、散々困らせてやろうと思う。