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 僕の人生について。
 生まれて、生まれたからには生きて、生きるからには〝何か〟が必要で、その〝何か〟が僕にとっては音楽だった。
 それだけ。
 そして僕は、他者より明らかに優秀な点がひとつだけあった。
 それは音楽に対し、どれだけでも、ひたむきになれるということ。そしてそれを一番最初に認め、褒めてくれたのは、親でもバンドメンバーでもなく、万だった。
 だから——勿論それだけではないが——万は僕にとって一等特別だった。僕の心の中にある、真っ黒な夜空に輝き瞬く星のような男。
 そして僕は、音楽と長く愛しあえる分、人間をうまくやることができなかった。
 他者の機嫌を取ることを愚かと考え、自分が楽に生きられるなら、誰かが傷つくことすら厭わない。苦しければ、悲しければ、しんどければ、女に助けを求める。
 そうしていつも、僅かな空虚すら埋まらないことに気づき、女をその辺に捨て置いて音楽に再び縋るような——そんな男だった。
 生きるために必要なものは、音楽と、万。
 それだけだった。それだけだったはずだ。
 それが今はどうだろう。
 八月の炎天下の中、ぼろぼろの麦わら帽子を被りながら洗車をしている。これが終わったら、広大な庭で雑草刈りだ。もしかしたら靴も磨かされるかもしれない。
 もう隣に万は居ない。全身を寄りかからせ、眠っている間に全てを片付けてくれる存在は、居なくなってしまった。
 星は砕け散ったのだろうか? いや、違う。僕の中の夜が、朝を迎えることを覚えたのだ。星はまだ、そこに在る。僕を見守り、微笑んでいる。優しく。厳しく。穏やかに。

 家で僕のことを待つ人が居ることが、嬉しかった。
 その子は僕の肌が焼けることを嫌い、僕に新たな交遊が生まれることを嫉妬しながら喜び、感激して泣くのだった。
 太陽でもあり、月でもあり、雨でもある。複雑で、色んな顔があって、僕がちゃんと人間をやらなきゃ、相手は務まらないような子だ。
 ——生きるために必要なもの。勿論、音楽。
 そして何より、モモ。君を幸せにするために、今日も僕は車を洗う。きつい洗剤で、ピカピカになるまで洗う。
 弦をつまびく指が荒れたら、怒りながら薬を塗ってね。